介護用ITソリューション情報

介護用ITソリューション情報

夜間排せつケアに効果抜群の尿吸引ロボ「ヒューマニー」――ユニ・チャーム ヒューマンケア


□男女共用の尿吸引パッドは二重ギャザーで尿漏れを防止

 尿吸引パッドの利用者への装着は、紙おむつを使う場合と同じで、紙おむつの中に尿吸引パッドを入れて使用する。紙おむつは一般のものでよいが、専用のおむつもある。

尿吸引パッドの装着が済んだら、尿吸引ロボ本体についているコードをコンセントにつなぎ、スイッチをオンすればよい。これで準備は完了だ。

毎秒25cc吸引。1回の尿とりに要する時間は約10秒

 「ヒューマニー」は排尿が始まると同時に検知し、毎秒25ccの尿を吸引する。人の平均的な尿量は1回当たり約200ccなので、1回の尿とりに要する時間は10秒程度。

 排尿を検知し終わってからも、ヒューマニーは約90秒間回り続ける。そして最終的にパッド表面に0.5ccほど残った段階で、次の排尿検知まで待機状態になる。


□尿とり後の紙おむつとの違いは歴然。ヒューマニー(左)に比べ、紙おむつ(右)は尿で膨らんでいる

 作動している間はモーターが回り続けるので、モーター音がする。多くの場合、これは使っているうちに慣れてくるが、どうしても気になる場合は毛布などをかけるとよいそうだ。また敷物を敷くと、振動音が抑えられる。

 利用者が装着する尿吸引パッドとヒューマニー本体とをつなぐチューブの長さは2m。ポンプの能力を一定に保つため、あえて長さは調節できないようにしている。

 ヒューマニーを使う際は仰向けに寝たほうが吸引効果は高い。横向きに寝ると、尿が下に落ちやすくなるからだが、それでも90度までの横向きであれば吸引する。うつ伏せはチューブを体に巻き込んで吸引効果が落ちたり、肌トラブルの元にもなるので避けたい。

メンテナンス、誤作動防止にも配慮

ヒューマニーには利用者の利便性を高めるためのさまざまな工夫がある。

 例えば電源は、近くにコンセントがなくても使えるよう、内蔵バッテリーも別売している。尿とりパッドにセンサーを取り付ける際も、一定の方向でしかセットできない形状になっているし、何かトラブルがあるとアラームで知らせる。

 衛生的な状態を保てるよう、本体の中に入っているポンプ以外はすべて外して漬けおき洗いができる。全部色分けしてあるので、元に戻す場合も間違えることはない


□本体背面。色分けしてあるので分解洗浄後の取り付けも簡単

 タンクは1000ccまで入る。これは1000ccで約9割の利用者はカバーできるためだが、尿の量が多い人のために1200ccまで吸引できるタンクも用意している。その際は、通常は800ccで予備アラームが鳴るのを外している。

 衛生面から専用パッドは使い捨て。唯一、交換が必要なのは排気フィルターで、ヒューマニーを毎日使った場合、6ヶ月程度で交換する仕組みだ。

10万円の尿吸引ロボが4月から月額800円程度で利用可能に

 ヒューマニーを使ってみたいという人に朗報がある。それは、2012年4月以降、これまでとは大幅に安い費用で利用できるようになることだ。

 じつはこれまで(2012年3月現在)、ヒューマニーの価格は本体だけで10万円(非課税)していた。ケアマネジャーにケアプランの中でヒューマニーを使うことを明示してもらうと介護保険の特定福祉用具購入助成制度を使えるので、利用者の負担は1万円だったのだが(10万円で購入し、2ヵ月後、9万円が償還)、それが劇的に安くなる。

 「介護保険のルール改定に伴って、2012年4月1日からレンタルが可能になります。テープやタンクは購入助成のままですが、それらを取り除いた本体は貸与種目となります」(ユニ・チャーム ヒューマンケアの幡野さん)

 試算では、月額800円程度の自己負担で利用できるようになる。またレンタルは数ヶ月の短期でも利用可能なので、「眠れない排せつケア生活の解消」のためにも、試してみる価値は大いにありそうだ。

 ただし、使い捨ての専用パッドは介護保険の対象外なので介護保険助成制度は使えない。オープンプライスで参考価格は1枚300円程度。12時間、尿を吸引したあと洗浄し、さらに連続して12時間使用できるので、1枚で24時間使える。介護ショップならどこでも購入可能である。

 ヒューマニーのもう一つの効果も紹介しておこう。それは、紙おむつと比較した場合の夜間使用時のゴミ重量と、それを燃やした際のCO2排出量の圧倒的な削減効果だ。

◎紙おむつとヒューマニーのゴミ重量、CO2排出量比較
紙おむつヒューマニー
装着方式テープ止め × 1 約120g伸縮ネット × 1 約1g
パッド尿とりパッド × 2 約80g尿吸引パッド × 1 約60g
尿重量約500g約0.5 g
ゴミ重量計約700g約 70g
*ヒューマニーを伸縮ネットで使用した場合

 上記の表で分かるように、ヒューマニーは紙おむつの10分の1に環境負荷を削減することが可能になる。

今後は利用者のデータ活用機能も強化

 ヒューマニーは現在、要支援から要介護5まで幅広い層で利用されており、中心は在宅介護である。

 進行性核上性麻痺を患っている要介護度5の千葉県の青山さん(男性、75歳)は毎晩5回のパッド交換が必要で、介護者である妻はそのトイレ介助とパッド交換による睡眠不足から自分も体調を崩し、夫をデイサービスに送り出したあと、病院に通う状態だった。

 それがヒューマニーを導入して以降、夫は朝まで安眠できるようになり、デイでの行動も活動的になった。妻も夜間の排せつケアから解放されてぐっすり眠ることができ、体が楽になって病院通いも減った。

 くも膜下出血で倒れ、リハビリを含む半年間の入院を余儀なくされた神奈川県のMさん(67歳、女性)の場合、昼間は夫の介助でトイレに行けたが、夜間、夫の手を借りてパッド交換をするのは気兼ねがあった。だが、吸収量の大きな長時間用の大判パッドでは、ゴワゴワした着け心地が不快だった。

 そこで入院したときに紹介されたヒューマニーを利用したところ、そうした気兼ねや不快感を感じることなく、安心してゆっくり眠ることができるようになった

 こうして在宅利用で大きな効果を発揮しているヒューマニーだが、一人暮らしの場合、自分ではうまくパッドを装着できないこともある。センサーが検知して尿とりをするが、正しく装着されていないと吸引するより漏れる量が多くなってしまうこともあるからだ。

 そうした際にはヘルパーサービスを利用すると効果的である。

 一方、施設での利用も進みつつある。施設でヒューマニーを利用しても省人化にはならないが省力化にはなるとして、ユニ・チャーム ヒューマンケアの幡野さんは次のように語る。

 「施設でヒューマニーを道具として活用する場合、昼間に摂取した水分と、夜間の尿の量を測ることによって、排尿ケアのパラメーターに使ってもらう、といった方法があります。もちろん、紙おむつで肌トラブルがある人向けに利用してもらうのも効果的です」

 ユニ・チャーム ヒューマンケアでは今後、ヒューマニーに利用者の情報(データ)を蓄積、分析して、ケアサービスの質の向上に役立てるようにする計画である。