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一堂に会した先進ロボットとその技術に注目集まる

次世代ロボット製造技術展「ROBOTECH」レポート

2010年7月28日から30日までの3日間、東京ビッグサイト(東京国際展示場)で「第21回マイクロマシン/MEMS展」「ROBOTECH」「SURTECH 2010」の3展示会が同時開催され、1万4,000人以上を集める盛況をみせた。このうち、初開催の「ROBOTECH」には50社・団体以上が出展。患者見守りロボットシステム、障害者自立支援ロボットアーム、段差昇降ロボットなどからシロアリ防除ロボットまで、多彩なロボットや関連技術が展示され、来場者の関心を集めた。
3展同時開催による相乗効果

 「第21回マイクロマシン/MEMS展」の目玉は、3年目を迎えた「BEANSプロジェクト」。これは、従来のMEMS技術(トップダウン技術)と、ナノ・バオ技術(ボトムアップ技術)を融合し、自律的に機能する異分野融合型次世代デバイス製造技術で、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進している(MEMSは微小電気機械素子とその創製技術。マイクロマシンと同義語)。
 今回の展示会についてBEANS研究所副所長 研究交流部長の竹井裕氏は「MEMSについての知識を持たない人たちにも、実際は自分たちの分野と深く関わっていることに気づいてもらえるなど、貴重な機会となった」としている。
 「SURTECH(サーテック) 2010」は表面加工技術や製品に関する展示会。同展では、技術や製品の展示だけでなく、生産技術上の問題点やトラブル対策、品質向上のための技術的な問題に関する相談コーナーも設けた。
 3つの展示会には各分野の技術者が来場し、活発な商談や交流が行なわれ、同時開催による相乗効果が得られた。最終日の30日には経済産業副大臣の松下忠洋氏も挨拶するなど、盛り上がりをみせた。

ロボットやその要素技術に高い関心

 「ROBOTECH」は医療・介護・生活支援など、あらゆる分野で今後の成長が見込まれることからさまざまなタイプのサービスロボットや、その要素技術が展示された。来場者の関心も高く、出展者の説明に聞き入り、質問をする光景が随所に見られた。
 要素技術として注目された一つが、新川電機の「光ファイバーを用いたモーションキャプチャ」。これを使うと、手の動きをパソコンを使ってそのまま再現でき、ロボットアームの入力装置などに使える。ロボットアームなどの装置は利用者が用意し、同社が公開しているヒューマンインターフェイスを利用することでデータの出力などができる。
 「2003年から販売を開始しており、主に大学関係で研究用に使われている。スポーツ選手の動きを研究する際などに、ヴァーチャルリアリティの中に手の動きを再現できる。ゲームなどでアニメのキャラクターの動きにも使っている。手だけでなく、全身のモーションキャプチャにも対応している」(新川電機 海外営業部の 明偉氏)


新川電機の「光ファイバーを使ったモーションキャプチャ」

 独立行政法人産業技術研究所は、「上肢に障害のある人の生活を支えるロボットアーム」などを展示、実演した。これは2006年から開発を開始しているロボットで、介助をする人ではなく、障害を持っている本人への自立支援をサポートする。
 「上肢の不自由な人、たとえば筋ジストロフィーの頚椎損傷で腕が曲がらない人などに、残っている運動器官で操作することによって自分の腕の代わりに使ってもらう。親指が動く人は親指で、動かない人は腕や足などでも操作可能。現在、病院や個人宅でユーザー評価実験中だ」(同研究所 知能システム研究部門サービスロボティクス研究グループ研究員の尹 祐根=ゆん・うぐん=氏)。これを市場に供給するべく、産総研技術移転ベンチャー「ライフロボティクス梶vも設立しており、尹氏はその取締役CTOでもある。


産総研の「上肢障害者自立支援ロボットアーム」

ロボットテクノロジーによる新規事業も盛ん

 大学発のサービスロボットも多数展示された。東京大学IRT機構の「IRT」、電気通信大学の「管内移動ミニロボット」「足つき車輪による段差昇降ロボット」、埼玉大学の「付添いの人と一緒に動くロボット車椅子」「ミュージアムガイドロボット」などはその代表例だ。


東京大学の「IRT」


電気通信大学の「管内移動ミニロボット」

 ロボットテクノロジーによる新規事業立ち上げに熱心なのは財団法人大阪市都市型産業振興センター。今回は次世代ロボット開発ネットワーク「ROOBO(ローボ)」のメンバー9社が共同出展した。ROOBOは法人で107社、個人で337社をメンバーに持つ全国ネットワークである。


9社の共同出展でロボットテクノロジーによる新規事業立ち上げをアピール

 「ロボットが成長するにはセンサーを初めとする要素技術が必要。その要素技術をさまざまな部分で組み込んでもらうということでもっと幅広い事業展開をと今回は展示している。介護ロボットについても研究会を立ち上げ、さまざまな事業創出をしていければと、今秋から少しずつ立ち上げる」(阪産業創造館 新産業創造推進室長の竹嶋正明氏)
 ただし、介護分野のロボット導入には安全性の基準をクリアーすることが必要であり、そうした面の研究も進める計画だ。「ロボットで100%の介護はないと思うが、10%でも20%でも護サービスの負荷を和らげることが出来ればと思う」と、同氏は語っている。

本サイトでは近く、「介護ロボット」特集を組みます。ご期待ください。