介護・IT業界情報

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デジタル化を促進させる「ケアIT」を多数展示(4)

車椅子や福祉車両でも最新技術塔載

 車椅子や介護浴槽、介護ベッド、福祉車両などでも最新技術を駆使した展示が多数見られた。

車椅子での来場者も多数
車椅子での来場者も多数

 アルバジャパンは独アルバ社の技術やノウハウを駆使した車椅子を展示。「アルバ社の実績は欧州は20万台強、日本では約1,500台」(営業部主任の平田正弘氏)。新製品の「MVP−502」(18万5,000円)は可変のバックレスト・リクライニング機構を塔載する。

  ホンダは助手席リフトアップシート車(エリシオン、オデッセイほか)、サイドリフトアップシート車(エリシオン、ステップワゴンほか)、車いす仕様車(フリードほか)、助手席回転シート車(フィット)などの福祉車を出展。「従来の手動装置は単にレバーをつけて、アクセルとブレーキにダイレクトに伝える方式だが、ホンダは積極的に特性を変えられる可変機構を塔載している」(本田技術研究所 四輪開発センター第1商品開発室第1ブロック研究員の木幡高志)。

 これによって、従来は福祉車両化したために低下していた本来の車の特性(機能)を忠実に再現できるようになった。また、イコライザーのワイヤを2本にすることによってブレーキの冗長化を図るなど、安全性を向上させている。

 マツダの今回の一番の人気は車椅子の組込みタイプ。「2000ccの大型車2台は2009年8月末に第一号車を納入した。5ナンバーで大型なのでリフトアップシートを倒さずにゆったりと乗れるので便利」(国内ビジネス企画部主幹の首藤敬氏)。アイドリングストップもついているので燃費もよさも売りだ。

  三菱自動車はサイドムービングシート仕様車、助手席回転シート仕様車・助手席ムービングシート仕様車、車いす仕様車などの福祉車両を展示。「車いす仕様車のリフトは米国製のメジャーなリフトを採用した。台数は年間100台程度」(三菱自動車カーライフプロダクツ 特装企画部特装グループ主任の浅田国英氏)。ムービングシート仕様車は5〜6年前から販売しているが、今後はさらに認知度を向上させたい意向だ。

 日産自動車100%出資のオーテックジャパンは、車椅子利用者や介護サービス向けに「ライフケアビークル(LV)」を出展。車椅子のまま乗り込めるチェアキャブ(SERENA、cube、CARAVAN、NV200VANETTE等)、助手席やセカンドシートに座るだけでリモコン操作で乗り込めるスライドアップシート(WINGROAD、ELGRAND等)、両手だけで運転できるドライビングヘルパー(MARCH、NOTE、TIIDA等)など。「こういう機会でないとなかなか見てもらえない」(統合マーケティング部長の眞崎敏史氏)ことから、熱心に相談する姿が多数見られた。オーテックジャパンの車両(機構部品)は日産自動車のみならず、他の自動車メーカーにも供給している。

 トヨタの福祉車両「ウェルキャブシリーズ」の特徴は、例えばサイドリフトアップシートなどの動きが滑らかなこと。「トヨタ独自に技術開発しており、大型車のヴェルファイアでは車両の高さがあるので地面に近い位置までストロークを下ろし、乗りやすくしている」(トヨタ車体 特装・福祉営業部営業室国内営業グループ主任の岡本政樹氏)。逆に小型のプリウスではそうした必要がないのでコンパクトサイズのユニット(コンピュータ)を塔載。車椅子をベルトにかけてつり上げ、折りたたんだ状態でルーフに収納できる。

新機能を搭載した福祉車両も充実(トヨタ)
新機能を搭載した福祉車両も充実(トヨタ)

 ニッシン自動車工業では「JIS企画の車椅子なら本年度中に運転席に使えるようになる予定。当社のジョイスティック(ステアリング用)利用は1年〜1年半後を目処に認可が下りる見込み」(加須工場の伊藤信昭氏)と、福祉車両専門メーカーならでは取り組みを見せる。

車椅子を吊り上げ車に収納(ニッシン自動車工業)
車椅子を吊り上げ車に収納(ニッシン自動車工業)

センサーやロボット技術も駆使したベッドや浴槽

 アビリティーズ・ケアネットの「ARJO(あるじょ)」はバスタブが上昇する点が他社との違いで、「それにより入浴介助者が腰をかがめずに介助できる」(千葉東営業所副所長の石嶋貴弘氏)。価格はストレッチャーと本体で700〜800万円(リース可)である。

 パナソニックは、ロボット技術を駆使しベッドと車椅子の合体を可能にした「ロボティックベッド」を公開。「2015年を目処に開発を進めている」(生産革新本部ロボット事業推進センターの塚田将平)。現状では、例えば合体時に動物がいたらどうするかといった「挟み込み」などの問題がある。それを解決するために国の安全規格をNEDOのプロジェクトで3〜5年をかけて制定予定。それが出来た段階で販売したい意向だ。

ロボット技術を駆使した先進ベッドも登場
ロボット技術を駆使した先進ベッドも登場

 パラマウントベッドはシャワー式介護入浴システム「シャワーベッド(Shower Bed)」や、睡眠管理マット「眠りSCAN」などを出展。このうち「眠りSCAN」はマットレスの下に敷き、非装着で利用者の睡眠管理をすることが最大の特徴。寝ているか、起きているか、ベッドから離れているか、といった睡眠日誌の自動記録、睡眠状態の分析が可能で、2009年7月から発売。「老人ホーム、グループホーム、精神病棟などで導入が進んでいるが、とくに認知症のグループホームなどでは、夜間の少ないスタッフでも対応できることから評価されている」と事業戦略本部眠りSCAN事業推進室長の小口直樹氏。

 ピジョンのベッドセンサー(参考出品)は、センサーをベッドの4個のキャスターの下に敷き、それによってベッド上の利用者の動きを知る。センサーとコントローラー間は無線通信、コントローラーはアダプターとナースコールに繋がる仕組みだ。「ベッド上の利用者の動きを感知する方法としては一般的に背中に敷くタイプがあるが、少し上げただけでアラームが鳴ってしまう。当社のセンサーはそうした誤報が少ない」( HHC・介護事業本部事業戦略部マーケティンググループの竹石亜希子氏)のが特徴だ。

 オプションでログ解析ソフトも販売予定で、どっちに動いたか、どこからベッドを降りたか、どれくらい寝ていたか、日別の動きなども分かる。また、アラームがあがって解除するが、トイレ誘導だったのか食事だったのかといったイベント内容も録音できるので記録の作成にも役立つ。4個のセンサー、コントローラー、解析ソフトを含めて20万円程度を予定。提供開始は来春見込み。

 ポピックは健康管理・見守り介護として「POPICピロー」「POPICバス」「POPICトイレ」「ウェアラブルシステム」を出展。このうち POPICバスは「浴槽の4ヶ所にセンサを塔載し、風呂に入っているだけで心拍や呼吸測定ができる」(セールスディレクーの中島孝明氏)という利用のしやすさが特徴。同社の商品は金沢大学自然科学研究科、射水市民病院、藤元早鈴病院などとの共同研究の成果だ。