介護・IT業界情報

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デジタル化を促進させる「ケアIT」を多数展示(3)

ケア記録機能の充実化やケアミックスITも

 日立情報システムズは新製品「福祉の森FUTURE」などを展示。同社は2009年1月、社内の事業合併をしており、従来の社会福祉法人向けの「福祉の森 exceed」と保健・医療・福祉情報システム「フレンドシリーズ」を合体したのが今回の新製品で、2010年1月リリース予定。「ただし、その段階では居宅系のサービスが中心で、2010年夏に施設版、2011年1月に障害者系サービス版を出す」(福祉営業部第一課主任の中村道信氏)予定だ。

 日立製作所のブースでは(財)全日本ろうあ連盟が9年かけて開発した「日本語−手話辞典」の全内容を網羅した「電子版 日本語−手話辞典」にも注目が集まった。8,000例の手話表現を動的な立体アニメーションとしてパソコン上に表示できるシステムで、価格は1万8,900円。これを縮小化した「携帯電話向け手話アニメーション配信サービス」も実証実験中だ(問い合わせ先:日立製作所中央研究所知能システム研究部=http://www.hitachi.co.jp/rd/crl/

 富士通は「HOPE/WINCARE V2」などを出展。WINCAREは2004年発売で、現在、新しいシステムを計画中だ。「次期システムは HOPE/WINCARE V2の機能を踏襲し、記録系の機能の充実化を図る。具体的には入力のしやすさと書いた記録を充分に活用してケアの向上に役立ててもらう。来年度のなるべく早い時期(夏以降)に出す」(ヘルスケアソリューション事業本部パートナービジネス統括部パートナーシステム部プロジェクト課長の橋本雅人氏)。

新機能を搭載したケアITの次期システムの開発も進む(富士通)
新機能を搭載したケアITの次期システムの開発も進む(富士通)

 HOPE/WINCAREは現在、約3,500のユーザー実績を持つ。これとは別に富士通は病院系の介護システムで約900ユーザーあり、合計4,000 ユーザーを超える。今後のケアITに関して橋本氏は「ケアミックスは一つの方向性であり、例えば医療と介護をどうミックスしていくかは狙い目。また各ベンダーがASPのシステムをSaaSで始めてきているので、それにどう対応するかも課題」と指摘する。

 富士データシステムは高齢者施設向け/通所サービス事業所向け記録管理システム「ちょうじゅ」)を展示。ケア記録のシステム化で先行しており、数値的な情報だけでなく、今日はよい顔をしていた、笑いが多かったといったような情緒的な情報も記録できる。「特徴的なのは現場での記録を重点的に見ること。そうした記録を取ることによって、仕事の引継ぎなどに役に立っている」(代表取締役社長CEOの齋藤芳久氏)。

ケア記録のデジタル化はサービスの効率化に不可欠(富士データシステム)
ケア記録のデジタル化はサービスの効率化に不可欠(富士データシステム)

 今後のケアITについて齋藤氏は「情報開示が非常に重要になっているので、それをいかに実現するか。同時にケア記録のトレースが重要になる。誰が、いつ、何時にどういうケアをしたかといった記録が、介護される側のモチベーションにも重要。ナース記録の連携も必要なので、その対応も急いでいる」と語る。

 ワイズマンは任天堂のDS対応システム、ケアIT最大手としてのASPサービス、来秋リニューアル予定の30数種類のワイズマンのラインアップ、の 3つを目玉に展示。リニューアルのポイントについて同社第一営業本部福祉営業企画部販売促進企画課長の星野裕一氏は「(ケアITの)ユーザーは目が肥えてきている。一方で、介護報酬の体質もあり、そんなに高いシステムを作っても売れない。従って安くてよいものを提供するようにしたい」と明かす。

ワイズマンは30種類以上のラインナップを展示
ワイズマンは30種類以上のラインナップを展示

 「今後の方向性としては"手書きからシステム化へ"というキーワードになると思うが、訪問系、在宅系がある以上、紙はなくならない。それをいかに有効に IT化していくかが重要で、入力のしやすさに尽きると思う」(星野氏)。入力のしやすさに関しては、システマティックな入力ではなく、帳票により似た形の入力方法、つまりパソコン画面に印刷帳票のイメージがあり、そこに入れ込むような形を提案したい考え。来秋には実現予定だ。

介護関連ロボットにも人だかり

 ジャニスは「響(ひびき)シリーズ」を出展。同シリーズは訪問介護・自立支援システム、居宅支援システム、通所介護システム、訪問看護システム、看護婦・家政婦(夫)紹介所システムなどで構成。全国300市町村以上の帳票や請求方式に対応しているのが特徴。

 介護する側の負担を軽減する上で期待が大きい介護関連ロボットでも見るべきものが少なくなかった。

介護ロボットも多数出展された(写真はセコムの食事支援ロボット・マイスプーン)
介護ロボットも多数出展された(写真はセコムの食事支援ロボット・マイスプーン)

 神田通信工業は、東京理科大学・小林研究室が開発した「マッスルスーツ」を展示し、人気を集めた。「今、鉄道関係や自衛隊(後方支援部隊)などから、マッスルスーツの可能性について問い合わせが来ている。介護についてはまだだが、スーツの実用化に向けて要求が具体化している」(営業本部メディカル機器営業部第二課の鈴木秀壽氏)。

 まずは、小林研究室でプロトタイプ化し、立ち上げる方向だ。この数年は小型軽量化を進めており、昨年は12キロあったものが、現在は7キロにまで軽量化された。デザインもシンプル化を図っている。これからはコストダウンが必要で、ポイントになる電源に関しては、現在はコード接続から、最終的には小型コンプレッサーのバッテリー駆動を目指す。

東京理科大学が開発した「マッスルスーツ」には黒山の人だかり(神田通信工業)
東京理科大学が開発した「マッスルスーツ」には黒山の人だかり(神田通信工業)

 北海道大学発ベンチャー企業のスマートサポートは、スマートスーツ「楽暮−La Classy−」を展示。同社は、スマートスーツ研究会(会長:田中孝之北海道大学大学院情報科学研究科准教授。顧問に山中正紀北大教授、Maria Fengカリフォルニア大学アーバイン校教授など5人。会員企業に三菱電機エンジニアリング、清水建設、豊田通商など15社)を組織している。NEDOの今年、来年度の補助事業で開発しており「なんとか来年中には商品化したい。値段は数万円を見込んでいる(上等な腰痛バンドより少し高額)。当社は技術をライセンスし、他社に開発販売を委託する」(社長の鈴木善人氏)。いまは介護服の中に忍ばせているが、より簡単にエプロンを羽織るだけで使えるようにしたい考え。

 大和ハウス工業は「ロボットスーツHAL」を出展。人が装着することによって身体機能を拡張し、増幅する装置で「筋肉を動かそうとする脳からの電気信号を皮膚表面で検出し、コンピュータ制御によって各部のモーターを動作させ、人の動きをアシストする」(東京支社ロボット事業推進室課長の新倉昭人氏)。今後期待の介護ロボットの一つだ。

「ロボットスーツHAL」も注目の的(大和ハウス工業)
「ロボットスーツHAL」も注目の的(大和ハウス工業)

 ユニ・チャーム ヒューマンケアは、日立製作所と共同開発した「尿吸引ロボ」を展示。本体は日立製作所、尿取りパッドをユニ・チャームが開発。尿が入るとセンサーが自動的に検知して吸引する。既に2009年5月から関東から近畿エリアまで販売しており、今年中には中国、四国、九州、東北もカバー予定。本体は10万円だが、介護保険が適用できるので利用者は1万円で可能。パッドの代理店での販売価格は300円程度。「1日1枚で済む。パッドは吸収能力を持たず吸引するので、ゴミの減量化が進む。尿もすぐに検知して吸引するので、表面の濡れ具合が少なく、スキントラブルがなくなる」(営業部チャネル開発マネージャーの繁田勉氏)など、環境面や利用面での配慮も怠りない。