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介護用ITソリューション情報

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IT活用事例

「ちょうじゅ」でペーパーレス化し記録業務を効率化

IT活用でサービスの質向上に取り組むシルバーシティ駒込

介護サービスの質を向上させるためにIT活用に取り組む介護事業者が増えてきた。都内7ヵ所に介護付有料老人ホームを展開する太平洋シルバーサービス(東京・武蔵野市、馬島 茂社長)は、東京・北区のシルバーシティ駒込(小澤公彦園長)でPDAを活用した入居者記録のIT化に取り組み、看護師や介護職員の記録業務時間を大幅に削減、介護本来の対人サービスの質の向上を図った。その有効性から、現在、他の施設でも導入を進めている。
アクセスと環境に恵まれた都市型施設

 シルバーシティ駒込は2000年11月の開設、シルバーシティ7施設の中では最も新しい。定員は52人、部屋数は50。シングル48室、多床室(二人部屋)2室で、入居者は同施設のある北区のほか、隣接する文京区、豊島区からが圧倒的に多い。昨年度(2009年)の稼働率は95.6%に達した。


シルバーシティ駒込の外観


安全に配慮した出入り口

 「皆さんにご愛顧いただいているのは、当施設は都市型であり、ご家族にも来ていただきやすい環境にあることです。ご家族のご都合に合わせて、いつでも来館できます。夜は防犯上、夜警がおりますので、仕事帰りに立ち寄られるご家族にもご入館いただくことができます。また周囲には旧古河庭園や六義園などの名勝がある一方、霜降銀座、染井銀座などの商店街もあり便利です。染井は桜のソメイヨシノの発祥の地でもあります。少し足を延ばせば、巣鴨のとげぬき地蔵もある。アクセスも環境もよいので、おかげさまで開設以来、高い稼働率を保っています」(園長の小澤公彦さん)

旧古河庭園(きゅうふるかわていえん)
斜面と低地を活かし、丘に洋館、斜面に洋風庭園、低地に日本庭園を配する。明治の元勲・陸奥宗光の別邸だったが、のち古河財閥が所有。当時の建物は現存せず、現在の洋館と洋風庭園は鹿鳴館などの設計で知られるジョサイア・コンドル博士が設計。日本庭園の設計は小川治兵衛。平成18年1月、国の名勝指定を受けている。
六義園(りくぎえん)
元禄8年(1695年)、五代将軍徳川綱吉の側用人・柳沢吉保が綱吉から賜った駒込の地に造成した回遊式築山泉水庭園。吉保自ら設計、指揮し、7年の歳月をかけて造った。小石川後楽園とともに江戸の二大庭園として知られる。園名は『詩経』の詩の六義(風・賦・比・興・雅・頒)に由来する。昭和28年(1953年)3月、国の特別名勝に指定。

 入居者の平均年齢は88歳。90%以上は要支援・要介護者だが、自立者も10%近くいる。 通りを挟んで、提携している医療機関「幸和クリニック」があり、夜間の往診体制も整っている。そうした医療連携のよさもあってか「最期をここで迎えたいというお客様が圧倒的に多い。7施設の中でもそうした要望は一番高い」と小澤さんは語る。


シルバーシティ駒込園長の小澤公彦さん

 建物は地上4階地下1階の合計5階。事務所関連は地階に収容している。職員はパート契約も含めて60人以上。要介護者3人に対して職員2人以上の人員体制(常勤換算)でサービスを提供している。そして、さらにサービスの質を維持するため2005年(平成17年)、シルバーシティ全体で品質マネジメントの国際規格であるISO9001を取得した。

 企業が顧客ニーズに応えるためには、ニーズに関する情報を吸い上げ(インプット)、製品やサービスに反映して提供(アウトプット)する必要がある。これをISOではプロセスと呼び、プロセスを継続的に改善することを品質マネジメントと呼んでいる。その要求を規定しているのがISO9001だ。

 「有料老人ホームでISO9001を取得しているのはまだまだ少ないと思います。なじみにくいと考えている事業者が多いのではないでしょうか。業務の負荷を軽減しなければならない中で事務的な負担が増え、資金もかかりますから」(小澤さん)

 しかしそれだけに、ISO9001の導入効果は大きいと事務主任の中村一臣さんは次のように指摘する。

 「それまでは、いい意味でそれぞれの施設のカラーが出ていましたが、別の見方をすればバラバラでした。それがISO9001を取得することによって、サービスの質が平準化されてきた。たとえば、帳票やマニュアルの統一ができました。それまでは各施設で独自に、よいと思ってやってきた部分の統一感が出てきました。ISO9001で目指しているのは継続的な改善であり、そうした点が年々意識されてきていると思います」


事務主任の中村一臣さん

記録事務の効率化を目指して「ちょうじゅ」を導入

 シルバーシティ駒込が記録事務の効率化のために富士データシステム(本社静岡市、齋藤芳久社長)の記録管理システム「ちょうじゅ」を導入し、稼働を開始したのは2009年7月である。

 実はその数年前にも、モバイル機器によるシステム化を検討した時期があった。だがそのときは、できることが限られており、カスタマイズもできなかったので断念した。「その点、富士データシステムさんの『ちょうじゅ』はよくできていて、我々の要望を組み込むこともできることから採用しました」(中村さん)

 「ちょうじゅ」は、2008年に開かれた国際福祉機器展H.C.R.2008で知ったのがきっかけ。導入に先立って、ユーザーを10件ほど見学した。実際に使うであろう現場スタッフや本社スタッフのほか、数年前に断念した際のスタッフも含めて見学し、メリットとデメリットを確認した上で、正式導入に踏み切った。

 「PDAが非常に使いやすくなっていました。画面も大きくなっているし、カラー表示で分かりやすくなっている。携帯電話やゲーム機でタッチペンに慣れているスタッフも以前より多くなってきており、タッチペンの利用にも抵抗がなかった。50代、60代のヘルパーさんにも、使いやすいと好評でした」と中村さんは語る。

 従来の帳票は「ケアチェック表」というA4判の両面の帳票で、表に昼間、裏に夜間の介護状況を記録していた。食事、排泄などのカテゴリーが時系列になっており、記入していく。基本的には個々の入居者の記録を重ねていくのだが、そうは言っても集団で生活しているので、食事であれば食事の一覧表があり、そこに書いたものを転記していた。二度手間であり、記録漏れや転記ミスも発生していた。帳票によっては、さらに別の帳票があり、同じ事を二度も三度も書かなければならなかった。

 シルバーシティ駒込では、「ちょうじゅ」を導入することでペーパーレスを実現し、記録時間を短縮することによって入居者と接する時間を増やすことができるのではないか、と考えた。そして実際、「ちょうじゅ」の導入によって、一度入力すれば済むようになり、PDAを携帯することで、どこにいても必要な情報を見ることができるようになった。以前だと、帳票を管理しているヘルパーコーナーまで出かけて行き、情報の記入や閲覧をしなければならなかったが、そうしたことが不要になったので、大幅な時間短縮が実現したというわけだ。

集中的なトレーニング研修が奏功

 ITを導入して現場に根付かせ、全体的な効果を挙げるには、それなりの工夫が必要になる。ここで、シルバーシティ駒込の取り組みを時系列でみてみよう。

 「ちょうじゅ」を知るきっかけとなった国際福祉機器展H.C.R.2008は2008年9月に開催されている(9月24日〜26日)。その後、ちょうじゅのメリット、デメリットを見極めるためのユーザー見学を数ヶ月かけて行なった。予算の策定の関係から、2009年2月までには結論を出しておく必要があったからである。

 2月頃に正式に決定。7月の本稼働に向けて本社のキーパーソンおよびシルバーシティ駒込のスタッフが中心になり、IT環境の整備に取り組んだ。具体的には、ちょうじゅに合った動作環境が必要なので、パソコンのリプレイスや新規導入、PDAの導入を行なった。

 その後、全職員が使えるようにするため、ちょうじゅの開発元である富士データシステムの協力を仰ぎ、約1週間の集中研修を朝から晩まで実施した。基礎や応用など合計3コマの研修で、1コマに1時間半ほどを要した。

 「全ての職員が受講しなければならないわけですが、実際に入居者様のお世話をしている中で、時間を割かなければならないのでスケジュール調整が難しかった。そこで、事務所と会議室の2ヵ所で同時進行で行ないました。そうしないと間に合わない状況だったからです」(中村さん)

 この研修には、洗濯係りや夜警など、システムに関与しないスタッフ4、5人を除いて、全てのスタッフが参加した。入居者のケアに従事する看護師や介護職員はもちろん、フロントスタッフまで参加した。フロントスタッフが対象になったのは、顧客情報の登録や入退去のスケジュール管理、来館者の名前を入力したり、来館者の頻度をあとで検索するなど、介護以外の情報を多く取り扱うからである。ちなみにシルバーシティ駒込の介護スタッフは看護師が6人、介護福祉士が15人、その他もヘルパー2級以上の有資格者で構成する。

 研修が終わったのは2009年6月半ば。7月の本稼働までの2週間ほどを試行期間に当てた。PDAの操作を覚える必要があったし、ちょうじゅが本稼働を始めると現場から紙の記録がなくなるので、その状況に慣れてもらう必要もあったからである。数人の入居者をモデルに、紙の記録に書き込みながら、PDAでも入力するといった方法でトレーニングを行ない、7月から完全にペーパーレスに移行した。

PDAを駆使し入居者情報を瞬時に検索して対応

 「ちょうじゅ」は現在、10台のPDA(ヒューレッドパッカード iPAQ212)、3台のタブレットPC、4台のパソコンという環境でフル稼働している。ヒューレットパッカード社のPDAを採用した理由は、PDAの中では一番画面が大きく、見やすかったことだ。PDAに関する費用は、設定(ちょうじゅのインストールなど)も含めて1台約5万円である。


10台のPDAを導入しペーパーレスを実現

 従来の「ケアチェック表」は入居者1人につき1日1枚ずつ手書きで記録していた。入居者が50人いれば月に1,500枚、かなりの枚数だ。しかもそれを法律に基づいて一定期間保管しておかねばならないので、保管場所も必要だった。それが「ちょうじゅ」の導入によってペーパーレスが実現し、記録はサーバーにデータとして蓄積できるようになった

 「一番便利なのは記録の検索。入居者様の名前、日付、入力者名など多様な条件でケアの状況や分析データを瞬時に検索できる。さらに記録は食事量や水分量などが重要なのですが、日々の血圧や体温などのバイタルチェックも瞬時にグラフ化して出てきます」(中村さん)


●PDA画面1.
食事や水分摂取量などを入力する

●PDA画面2.
よく入力する文言は予め登録されており、選ぶだけ

●PDA画面3.
巡回時の様子も項目を選択するだけで入力

●PDA画面4.
サークル活動など大勢が参加する時は一括入力で

●PDA画面5.
入力された記録は大きく見やすい画面で確認

●PDA画面6.
データをグラフ化し一目瞭然に
記録作成時間を1日1時間以上削減

 これまで、バイタルチェックの測定表は看護師が赤や青、黒の鉛筆で手書きし、定規でグラフ化していた。IT化したことでそうした作業が不要になり、看護師の手間は大幅に削減された。

 「時間的には1日1時間以上は確実に減っており、それを入居者様のケアに当てることが出来るようになりました。介護職員にとっても、記録の転記作業がなくなり、その分、ケアに力を入れることが出来ています」と中村さんは語る。

 いつも入力する内容はチェックボックスに予め設けてあるので、手書きする頻度は少ない。一回入力すればPDAを持ち歩いてどこでも見れるので便利だ。また一括入力も出来るので、たとえば同じサークル活動をしている人の記録は、今までのように個別に入力する手間がなくなった(PDA画面4)。

 こうしてペーパーレスが実現したが、紙の帳票に関しては半月に一度ほど、入力情報をチェックするため、必要な情報をリストアップして印刷するといった使い方をしている。デジタル一辺倒になることのリスクを、紙というアナログで排除しているといえよう。

 「ちょうじゅ」を導入して1年。PDAの操作にとりあえず慣れるまでにひと月ほどしか要しなかった。中には数人、機械アレルギー的なスタッフがいて当初は抵抗もあったが、使えるようになった。「それしかないという状況になると、使えるようになるものです。また現場では得意な人がどんどん教えてくれるので、思っていたほど問題はありませんでした」と中村さん。

ただ、PDAとPCの画面は見ることの出来る情報量が違う。たとえば、PDAだとグラフ化された情報などは確認し辛い面もある。また記録を読み込むにもPDAだと少し時間がかかるので、1ヵ月分のまとまった記録を見たいときなどにはPCを使っている。ただ、そうした確認をするのは社員や管理職が大半で、一般のヘルパーはPDAを活用している。


●PC画面1 PDAでは見づらい情報はパソコンで
(日常の記録確認画面)


●PC画面2 何時間排便がないかなどを自動的にリストアップする
(排泄注意者画面)


●PC画面3 一定期間の基本的な記録をグラフや数値化して表示する
(総合グラフ画面)

今では「ウチのちょうじゅ」。今後も更なる活用へ

 シルバーシティ駒込では、PDAは無線LANで本社(東京・武蔵野市)のサーバーと繋がっている。無線通信なので通信障害もゼロではないが、送信されなかった記録は残っているので、あとで送信可能な状況になったときに送信できる。

 施設のパソコンは、本社のサーバーと光回線で繋がっている。従って、シルバーシティ駒込のデータは本社側でも見ることができる。万一、転倒事故などが起きた場合、その経緯なども本社で確認できる仕組みだ。データのバックアップは本社で行なっている。

 IT化の効用は、園長の小澤さんの「もう戻れない」という言葉に集約されているようだ。「ちょうじゅ導入後も、富士データシステムさんは我々の要求に応えてくれている。今では"ウチのちょうじゅ"になっています」と、小澤さんは手ごたえを語る。

 今後のITへの取組みについて中村さんは「『ちょうじゅ』は可能性が無限にあります。もっとこうしたいと思えばいろんなことができるので、そうしたことへのアプローチも探りたい」という。

 今はExcelにデータを落として加工している分析表を、ちょうじゅ内に取り込むのもその一つ。今でも個人単位の管理は充分にできているが、たとえば体重の観点から全員のデータを瞬時に出して毎月の推移を見るといったように、データ連携し、統合的に使えるようにしたい考えだ。シルバーシティ駒込を皮切りに、今年度はシルバーシティ武蔵野、シルバーシティ石神井南館で「ちょうじゅ」を導入。太平洋シルバーサービスでは今後、全ての施設で「ちょうじゅ」を駆使したIT化を進める計画である。

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