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介護・IT業界情報

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「SaaS」最前線
少ない投資で大きな効果を得るIT活用法

インターネットを介して必要なソフトウェアを利用できる「SaaS」の市場が拡大している。IT専門調査会社IDC Japanによると、2013年のSaaS市場は2008年比で3.1倍に増加する。経済産業省が2009年3月から運用を進めてきた「中小企業向けSaaS活用基盤(J-SaaS)は2010年度から民間企業に委託して普及拡大を図る計画だ。介護サービス向けSaaSも増加しており、介護事業者にとっては少ない投資でのIT活用が可能になってきた。

急拡大が見込まれるSaaS市場

 「SaaS(Software as a Service=サーズまたはサース)」は、ソフトウェアの中からユーザーが必要とする機能だけを取り出して提供するサービス。

 一般にパッケージソフトウェアは多くの機能を搭載しているが、個々のユーザーにとっては不要な機能もある。SaaSだと、ユーザーは必要な機能だけをインターネットからダウンロードし、応分の料金を支払えば済む。スピーディーにソフトウェアを導入し、投資を最小限に抑えられることが大きなメリットだ。

 これと似たソフトウェアの提供形態に「ASP(Application Service Provider)」がある。SaaSがソフトウェアの機能を主眼としているのに対し、ASPはソフトウェア全体を対象とするといった違いが指摘されることもあるが、本質的な違いはないと考えていいだろう。ASPやSaaSの普及啓発などに取り組む特定非営利活動法人ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム(東京都品川区、河合輝欣会長、略称ASPIC)でも、「ASPとSaaSは同義語」としている。


図1:ASP・SaaSの基本的な仕組み
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SaaSは1990年代後半から登場したアメリカ発の考え方。IDC Japanによると、2009年の国内Saas/XaaS市場は前年比20.8%増の596億円(見込み)。これが2013年には、2008年比3.1倍の1,521億円規模に達すると予測している。


図2:国内SaaS/XaaS市場 投資額予測
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 参考までに、図2の「XaaS」(X as a Service)はシステムの構築や運用に必要なハードウェアや回線、ソフトウェアの実行環境などをインターネットを介して遠隔利用できるサービスのこと。ASPと併せて、広義のSaaSと考えても差し支えないだろう。

 IDC Japanのこの予測は2009年7月時点のものだが、前回調査(2009年2月)から上方修正したとしており、SaaS市場の拡大ぶりが見て取れる。同社では「今春にも新しいSaaS/XaaS市場規模予測を発表する予定」(マーケティングの津谷拓夫氏)で、さらなる上方修正も見込めそうな気配だ。

スピーディーかつ安価でのIT活用が可能に

 SaaSが急速に拡大しつつある理由は、なんといっても必要な機能をスピーディーに、しかも通常のアプリケーションパッケージソフトウェアよりも安価に導入できる点がユーザーに評価されているからだろう。

 IDGジャパン(世界最大規模のIT関連情報プロバイダーIDGの日本法人)が、主催する展示会やセミナーの来場者などを対象に行なったSaaSの利用状況に関する調査(2009年1月9日〜20日の12日間。有効回答者1,456人)では、全体の3割強がSaaSまたはASPサービスを利用しており、導入予定や利用を計画しているケースを含めると半分近くに達している。


図3:SaaS利用は3割超
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 IDGジャパンはSaaSの満足度に関しても調査し「利用企業のうち約6割が現在のサービスに満足している一方で、不満に感じている割合は7%と低く、ユーザー満足度は高い」と分析している。

 経済産業省の「J-SaaS(ジェイ・サース)」は「ITに関する専門知識が少ない中小企業でも安価かつ容易に活用できる、インターネット等を活用したソフトウェア提供サービス」で、ソフトウェアベンダーにJ-SaaS向けのソフト開発助成金を提供することで基盤システムを整備したもの。

 「企業の業務に共通するアプリケーションを対象に整備した。助成金はソフトウェアやベンダーによって上限が2,000万円だったり5,000万円だったりと一様ではない」(経済産業省商務情報政策局情報処理振興課)

 J-SaaSで提供するアプリケーションは19種類。具体的には財務会計、経理、給与計算、Web給与明細閲覧、税務申告、グループウェア、経営分析、セキュリティ対策、販売管理、プロジェクト管理、インターネットバンキング、社会保険手続き、顧客商談管理、仕入れ・在庫管理、EDI、CAD、データ配信、データ管理、省エネ管理である。

 このうち、たとえば財務会計では「弥生会計 10スタンダードfor J-SaaS」「勘定奉行 for J-SaaS」など9件を揃えている。

 購入方法は通常のインターネットショッピングと同じで、会員登録し(無料)、商品(利用したいソフトウェア)を探し、ショッピングカートに入れ、レジで決済方法を選択すれば完了する。

 従来のパッケージソフト導入に比べると格段に手軽であり、スピーディーに購入することができる。

 SaaSのもう一つのメリットである「ソフトウェアを安価に活用できる」という点では、以下のようだ。

 まず料金の支払い方法だが、ライセンス形態によって月額、年額、一括の3通りがある。たとえば「弥生会計 10スタンダードfor J-SaaS」は年額制で、税込価格は1ライセンスあたり4万2,000円、「勘定奉行 for J-Saas」は月額制で税込価格は1ライセンスあたり4,980円。いずれも購入当月は無料、初期導入費用なし、である。

 これを通常のパッケージソフトウェアと比較すると、たとえば「勘定奉行」の場合、廉価版の「スタンドアロンモデルBシステム」で税込価格が21万円だから、割安感は充分だ。ただし、SaaSは機能を絞り込んであるので単純比較はできないが、必要な機能だけを使いたいユーザーにとっては投資を抑えたIT活用が実現する。

 ちなみにJ-SaaSは2010年度以降、サービス全体の運営を民間企業に委託する計画。基盤システムの開発は富士通が手がけており、「富士通に委託する可能性は高い」(情報処理振興課)としている。

介護分野でも増加する「SaaS」

介護分野に関しても「SaaS」は増加中で、たとえば以下の表のようなものがある。


介護サービス向けSaaS(ASP)含むの例
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上掲の表に紹介したSaaS(ASPを含む)について、簡単に補足しておこう。

 「ワイズマンASPサービス」は居宅介護支援事業者・居宅サービス事業者向け、施設サービス事業者向け、自治体・在介・地域包括支援センター向け、障害福祉サービス事業者向けの4つのカテゴリーに大別される。

 上掲表の「在宅ケアマネジメント支援システム」は居宅介護支援事業者・居宅サービス事業者向けの中の一つで、このカテゴリーには他に訪問看護ステーション管理システム、デイサービス管理システム、デイサービス介護情報システム、ホームヘルプサービス管理システムなど合計16種のシステムを網羅している。

 ちなみに施設サービス事業者向けは、施設ケアマネジメント支援システム、介護老人保健施設管理システムなど9種類。自治体・在介・地域包括支援センター向けは、利用者総合台帳システム、地域包括支援センター支援システムなど4種類。障害者福祉サービス事業者向けは、障害者施設支援システム、障害者居宅サービス支援システムなど4種類。

 ND ソフトウェアの「ほのぼのLight」は上掲の在宅サービスのほか、居宅介護支援サービス、施設サービス、介護予防サービス、地域密着型サービスを提供する。

 利用料金は、各サービスに共通の月額基本料金7,350円(事業所番号単位)と、毎月のサービス利用料に応じて変動する月額従量料金を合計した金額(申し込み時に参加費52,500円が別途必要)。在宅サービスの月額従量料金は月額介護報酬請求額×0.9%で、上限は31,500円(税込)。施設サービスの月額従量料金は月額介護報酬請求額×0.3%で、上限は63,000円(税込)となる。各サービスとも、サポート、保守料、制度改正対応時のバージョンアップ費用は無償である。

 カナミックネットワークの「介護事業総合管理サービス」は、上掲表の居宅介護支援のほか、地域包括支援センター、訪問介護、訪問入浴、訪問看護、通所介護、通所リハビリテーション、福祉用具貸与・販売、特定施設入居者生活介護、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、障害者自立支援、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、短期入所生活(療養)介護がある。

 上掲表の居宅介護支援の料金はケアマネージャー1人分の基本料を含んだもので、ケアマネージャーが2人以上の場合の登録追加料は1人ごとに5,250円となる。サービスごとに初期導入費用と月額利用料は異なる。また複数サービスを利用する場合は割引がある。

なお、同社のこのサービスは、先に紹介したNPO法人ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム(ASPIC)が主催する「ASP・SaaS・ICTアウトソーシングアワード2010」の委員会特別賞を受賞している。

オプション機能も充実

 セントワークスの「Suisui」は介護保険、地域密着型、障害者自立支援の3つのサービスカテゴリーを持つ。「介護保険サービス」は訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーションなど11種類。「地域密着型サービス」は認知症対応型共同生活介護(短期利用)、認知症対応型共同生活介護(短期利用以外)、地域密着型特定施設入所者生活介護など6種類。「障害者自立支援サービス」は居宅介護、行動援護など4種類。

 基本機能の介護保険請求に加えて、売上や経営データの細部にわたる正確な把握や管理もできるほか、オプション機能も充実している。たとえば在宅系サービスにおけるヘルパーや配車等のスケジュールリング機能を活用すると、訪問介護の月間のおおまなかスケジュールと、日ごとの細かなスケジュール作成なども簡単だ。

 エス・エム・エスの「カイポケビズ」は居宅介護支援、通所介護、訪問介護の3分野をカバーする。居宅介護支援は、アセスメント(全社協)、居宅サービス計画書など6種類。通所介護は通所介護計画書など2種類。訪問介護は、訪問介護計画書など2種類。また、この3分野共通の機能として取引先管理、ケアマネ管理、利用者管理など9種類を提供している。

 SaaS(ASP含む)の中でも低コストである点が「カイポケビズ」のセールスポイント。初期費用が不要で、同じ事業所内の複数サービスで使う場合、2サービス目以降は1サービスにつき3,000円の加算で済む。

 NTTデータの「かがやきぷらんU」も低コストを指向したSaaSで初期費用は無料。月額利用料金は基本料金1,000円に利用料金を加算したものになる。コア機能として簡単給付管理、国保連合会へラクラク伝送、利用者請求書/領収書作成、予定実績簡単連携機能、第1表〜第6表作成機能、ラクラクヘルパー管理がある。またオプション機能として統計帳票作成、アセスメント機能、ファクタリング機能、任せて安心収納代行、ヘルパー賃金機能を提供する。

 月額利用料はこうした機能を何種類使うかと、利用者数によって決まる。利用者は200人以下の場合、500円(525円)×利用者数、201人以上の場合、150円(157円)×利用者数。また上限金額を設けており、機能を1〜2種類しか使わない場合は3万円(31,500円) 。以降、3〜6種類までそれぞれ設定され、7種類以上は55,000円(57,750円)となる(カッコ内はいずれも税込)。

 マップソリューションの「MiSol介護圏分析サービス」は施設や拠点を新たに開設する際に有効なASPサービス。だが、既存施設に関しても他社との比較分析に活用しているユーザーもあり、介護サービスの経営シミュレーションにも役立つSaaSといえる。

 同サービスはGIS(地理/地図情報システム)を駆使しており、さまざまなデータを活用することでより精度を高めることができる。同社ではそのための豊富なデータを有料で提供している。

SaaS導入のポイント

 上掲の表で紹介したほかにも、介護サービス向けSaaSは少なくない。保険請求業務関連で顕著だが、たとえば携帯電話を使って介護記録を入力してリアルタイムで情報共有する、といったSaaSもある。情報共有は介護職間の連携をよくし、介護サービスの質を高めるのに有効だ。

 施設系の上位の介護システムを提供しているベンダーも、SaaSを視野に入れた新たな介護ソリューションの開発に取り組んでおり、介護サービス向けSaaSは今後、さらに充実するものと予想される。

 SaaSのメリットを改めて整理すると以下のようになろう。

1.スピーディーなIT活用
既に紹介してきたように、SaaSを利用するとサーバーやアプリケーションパッケージを導入しなくとも、インターネットを介してスピーディーに必要なシステム(機能)が利用できる。
2.IT投資(経費)の軽減
介護サービス向けSaaSでも分かるように初期費用を抑え(SaaSによっては初期費用ゼロ)、月額利用料だけで済み、IT投資(経費)全体を抑えることができる。
3.ランニングコストの軽減
導入したシステム(機能)のメンテナンス、バージョンアップなどが無償の場合も少なくないなど、ランニングコスト(運用費用)を抑えることができる。
4.現場重視によるサービスの質向上
インターネットを介して利用できるため、パソコンやPDAなどを介護の現場により近い場所で活用することも可能になり、サービスの質向上にも繋がる。

このようにメリットの多いSaaSだが、導入して有効活用するには注意しておく必要のある点も少なくない。SaaS一般に指摘される注意点や課題は以下のようだ。

1.既存システムとの連携性に課題
まったく新規にシステムを構築するためにSaaSを利用する場合は問題ないが、既存システムがあり、SaaSと連携させるような場合、データ連携やID、ログインといった面での連携に課題があり、管理も煩雑になる。
2.セキュリティが不安
SaaSを提供するベンダー側ではセキュリティの確保を謳っているが、ユーザー側では不安を感じるケースが指摘されている。あるITメーカーのアンケート調査では、ネットワークを介してデータを預けることへの不安が半分近いユーザーから寄せられている。
3.カスタマイズ性に不満
先に紹介したIDGジャパンのSaaS利用状況調査では「現在のSaaS/ASP利用者にとって最も不満な点はカスタマイズ性が劣ること」と指摘する。また上記のITメーカーのアンケート調査でも、20%以上が「カスタマイズしにくい」と回答している。
カスタマイズに関してはベンダーからカスタマイズ用ツールなどが提供されたりしているが、まだ充分とは言えない。

 SaaSを導入し、有効なIT活用を実現していくには、以上のようなメリット、デメリットを充分に考慮する必要がある。そして、実績やノウハウが豊富で、信頼のおけるSaaSベンダーを選ぶことがポイントになってこよう。

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