介護・IT業界情報

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 もう一つ、介護分野の職業訓練がある。これは失業保険を貰っている人が6ヶ月間、失業保険に加えて生活費を貰いながら職業訓練を受けることができるもので、よければ就職もできる。2011年に1級ヘルパーという資格はなくなるので、介護職員の基礎研修に持ち上がらなければならない。今、1級や2級の有資格者は一定時間は基礎研修の実務研修の時間は割愛される特例があり、当然持ち上がってくる。それとキャリアアップが繋がっているわけだ。

 2012年の介護報酬改定時には、この介護職員基礎研修を修了した人が何人いたならいくら、ということになる。1級がなくなるので、下は2級しかいない。従って2級をより多く確保しておき、スキルの高い人を持ち上げ、さらに勉強したい人は介護福祉士に進むという形だ。

 また資格だけでなく、事業所の中においても登録ヘルパーは常勤ヘルパーに、常勤ヘルパーはサービス提供責任者、さらにはリーダーになっていくといったキャリアップもある。いずれ介護福祉士は3年制になり、基礎的医療ケアが行なえるようにする方向にある。つまり簡単な医療については介護福祉士も行なうことになる。

「外付けサービス」への対応も

 同時改定に向けて特養や老健の整備が必要だが、圧倒的に必要になるのは居住系施設や高齢者集合住宅。これは医療の急性期からの受け皿が不足しているから。つまり病院から出てくる人たちの受け皿がない。当然、病院から出て特養や老健に入れない人たちが居住系の施設に入った場合、保険料は(診療報酬)は払っているわけだから、病院にいようが自宅にいようが、どこかの施設にいようが、受けられる医療は平等でなければならない。

 そこで、病院以外は医療についても介護についても外部から行こうという動きになっている。このうち特養と老健は介護施設だから外部から行くことはないが、少なくとも医療については外から行けるようにしようというのが方針。グループホームや特定有料老人ホームなどの特定施設は看護士がいるが、そこについても出来るだけ外から行けるようにしようという「外付けサービス」だ。そうなると現状では在宅医療を行なう医師と訪問看護ステーションが不足する。

 このことは2009年6月の第17回日本慢性期医療学会でも指摘されている。急性期医療退院後の受け皿としてケア付き高齢者住宅が不足しており、そうなると介護施設の特養、老健は要介護4、5の重度の人が中心で、要介護3以下の人たちは居住系サービスに行かざるを得ない。だからなおさら、そこには介護サービスや医療は外付けで入る必要が出てくる。

 将来的には、在宅ケアを支える人的な方向は、在宅医療に必要な診療を医者ではなく看護師に重点的にやらせたい。医者は緊急時や、亡くなった際の看取りなどに対応し、通常は訪問看護師ができるだろう。逆に、訪問看護の基礎的な医療は介護福祉士がやれるようにしたい。これが連携できるスタッフを育てる必要性の根拠だ。

 介護事業者の72%が交付金を貰っているということは、大半の事業所はこれでいくしかないという状況だ。ただし、取り敢えずは一時金とする事業者が多い。なぜなら昇給となるとずっと上げなくてはならないから。それも介護職員だけで一般の事務職員などは対象外。キャリアアップして昇給を決めた場合、民主党がマニフェストどおり2012年に介護報酬を上げてくれればいいが、どうなるか心配なところだろう。