介護・IT業界情報

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デジタル化を促進させる「ケアIT」を多数展示(5)

全盲や弱視者、失語症者向けなどの介護ソリューションも

 車椅子や介護浴槽、介護ベッド、福祉車両などでも最新技術を駆使した展示が多数見られた。

 アメディアは全盲や弱視の人向けの商品を展示。以前はイメージスキャナーを使って文字情報を読み取り、音声で読み上げたり、拡大表示をしていた。だが頑丈に作ったため約8sと重く、認識についても影によって誤認識するなど問題点があった。「そこで、認識率を高め、持ち運びをしやすいよう、携帯電話のカメラを使ったシステム」(同社システム開発部の小林研一氏)を開発中だ。NEDOの助成金を活用した「小型カメラを用いた携帯型音声イメージシステム」で、近く提供を開始する。

視線コミュニケーションシステムなどにも注目
視線コミュニケーションシステムなどにも注目

  エスコアールは失語症者の会話能力回復用「絵カード訓練装置」(NEDOの福祉用具実用化開発推進事業)を展示。失語症者は、見て何かは分かるが言葉が出てこない。この絵カードをこの機械に通すと、最初の一文字をヒントとして与え、その後に正しい答えが出てくる。絵カードを置いて10秒経ったらヒント、さらに10秒後に答えを出すといった調整もできる。再度、聞いて真似をしたいときは何度でも出せる。「家庭で自習訓練をするときに最適」(社長の鈴木弘二氏)。どのカードを練習したかといった情報はパソコンに残る。絵カードは最終的に2,500〜3,000枚を予定。現在、開発途上で、値段は機械だけで約 3万円を予定。絵カードは別売で3,000枚で12万円を予定。専門家がリハビリテーションで利用するシステムも計画している。

失語症者の会話能力回復用装置も(エスコアール)
失語症者の会話能力回復用装置も(エスコアール)

 廣済堂スピーチオ販売は、目の見えない人向けの二次元コードによる活字文書読み上げ装置「Speechio PLUS(スピーチオ・プラス)」を出展。スピーチオ・プラスはカメラを塔載しており、ワープロや印刷物の活字文書を、同じ紙面に印刷されたSPコードから音声で読み上げる。「目の見えない人に喜ばれるのは、プライバシー情報が保たれること。例えば年金定期便の銀行振込情報を知りたい場合、目が見えないと誰かに読んでもらわないといけないが、読まれたくない。そうした際、スピーチオ・プラスを使えば自分で知ることができる」(社長の深見拓史氏)。島根県安来市では広報誌の各ページにその内容をSP コードでも表示しており、目の見えない人でも読めるようにしている。SPコードには1,000文字程度が収容できるので、こうしたことが可能になる。価格は4万9,800円。

 タナベは、自然光タイプの点字ブロック「フラッシュドット」「誘導ブロック」を出展。フラッシュドットは弱視者の夜間歩行の安全を確保する自然光タイプで、電池仕様型は超省電力回路と一次リチウム電池の使用で10年以上の駆動が可能。ソーラータイプはキャパシタータイプ蓄電池の採用でメンテナンスフリーを可能。「点字ブロックはもともと全盲向けに開発されたものだが、実際の対象となるのは全盲は二割で、八割は弱視などの視覚障害者。従って点字ブロックは全面に敷き詰める必要はなく、要所要所でOK」(商品開発部長の秋下好正氏)。徐々に暗くなり徐々に明るくなる機能を持つ。

  テクノスジャパンは高性能バイオスイッチMCTOS(マクトス)を塔載した「MCTOS Model WX」(セット価格38万円)、簡易型バイオスイッチEMOS(エモス)を塔載した「EMOS PX」(同18万円)を展示。バイオスイッチは生体信号を機械を制御する信号に変えるスイッチで、 ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの四肢の動かない難病者がコミュニケーションを図る道具。EMOSは筋肉の収縮(筋電)、瞼や眼球の収縮(顔電)を額に付けたディテクターで検出し、オンオフのスイッチに使う。MCTOSは、それに加えて脳波(β波)も使えるタイプ。

 「利用者の多くは在宅療養者。NPO法人が障害者支援活動などにも利用している。本来は利用者の意識がハッキリしているうちに納得してもらって使い始めたほうがいいが、実際には脳波しか使えないといった状態になってから問い合わせをもらうことが多い」(経営統括グループ総務担当課長の牛谷定博氏)。開発は平成8年から。出荷台数は世界累計で400台強でまだ多くないが、ALSだけでも国内で4,000〜5,000人がいると言われており、介助をする家族に理解してもらうことが最重要と同社ではいう。