介護・IT業界情報

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都市大・生体医工学科の新棟がオープン(3)

病院と同じ設計設備の手術室を初め、最新の機器を活用した教育、研究へ

 生体医工学科の新棟(2号館)は地下1階、地上4階建て。3階に臨床実習室や学生実験室、4階に臨床器械工学研究室、手術室、生体認知工学研究室、多目的室・実験準備室、クリーンルーム(2室)などがある(写真C〜E)。

C介護・福祉に有効な片手こぎパワーアシスト車椅子を開発
C介護・福祉に有効な片手こぎパワーアシスト車椅子を開発

D手術ロボットマニピュレータやカプセル内視鏡も
D手術ロボットマニピュレータやカプセル内視鏡も

E超音波診断装置でも先行する
E超音波診断装置でも先行する

  このうち3階の臨床実習室は、石島教授の談話にもあるように、臨床で使用する医療機器(ME機器)を学生自ら実際に操作してその基本機能を学習する(写真F、G)。学生実験室は、福祉ロボット製作や自作電子回路による神経パルスの観察など、学科独自の実習を行なう。

F病院と同じ手術室には手術台2セットを設置
F病院と同じ手術室には手術台2セットを設置

G臨床で使う医療機器(ME機器)も充実
G臨床で使う医療機器(ME機器)も充実

4階のクリーンルームは、特別な換気装置で室内の空気を極度に清潔に保った部屋で、細胞などを用いた実習などに活用する(写真H)。

H細胞実習などに使われるクリーンルーム
H細胞実習などに使われるクリーンルーム

医療の知識や現場を医療工学を目指す若者に提供したい
――昭和大学学長・細山田明義氏

昭和大学学長の細山田明義氏
昭和大学学長の細山田明義氏

 研究室を見せてもらったが、現場を離れて8年経ち、進歩を肌で感じ驚いている。都市大学の中村学長とは私立大学協会でよく顔を合わせ協力して貰えないかと。昭和大学は医学でスタートし薬学、歯学、計量学(看護学科など)の4学部。薬学部は少し遠いかと思うが、残りの3学部については日常の診療研究などを通じ、工学系の知恵を借りなければいけない部分が多々あると感じている。

  私自身、麻酔学の専門で朝から晩まで機械と向き合ってきた。最初はモニターなどはほとんどないので聴診器ひとつで心臓の音を聴きながら、あるいは血圧を測りながらやってきた。今は自動血圧計があるので何もしなくてよい。やることがないのでモニターばかり見ているといったことになりがち。生体の反応を肉眼でちゃんと見ないとモニターは嘘をつくことがあるからと笑い話でいうが、それくらい発達している。そうした長い経験を積んでいるので、我々の持っている知識や技術、医療の現場といったものを医療工学を目指す若い人たちに提供できればありがたいと思っている。

 逆に、我々の持っていない工学系の先生がたに知恵を貸していただけるのではないかと提携をさせていただいた。この提携のもとで、何か新しいものが生まれれば素晴らしいと思う。時々、帯に短し襷に長しということがあるが、それは現場を知らないからで、実際の医療の場所を提供することは意義がある。我々としては問題を投げかけ、それを解決してもらうといったことも期待している。

イノサイドでのニーズと新しいものの開発、改良が必須
――東京女子医科大学学長・宮崎俊一氏

東京女子医科大学学長の宮崎俊一氏
東京女子医科大学学長の宮崎俊一氏

 私は生理学が専門だが、工学との繋がりが強い分野であり、親近感を持っている。生理学的にみると生体は素晴らしく精密、精工にできている。ものを感じ、それを情報に変換し、電気信号や化学物質に変換できる。それを伝え、まとめ上げて総合的に判断し、最終的な構造や生体反応を引き起こすことができる。

 しかし医療行為となると、われわれだけにできることは限られている。言葉によって質問しその人の症状を知る、目で見て観察する、聴診器を使い音を聞いて判断したりするが、限定的だ。それが機械工学や電子工学を使ったインスツルメンツによって初めて人間では出来なかったことが可能になる。従ってイノサイドから見ると期待大だ。

 ここで開発されたものは人間に代わり、人間ができないものを感じ取りそれを変換する。それをインテグレートして数値化する。最近では画像として表わすことも盛んだ。さらにインフォマティクスによって情報をうまく認識して、さらに結果まで出していくのではないかと期待される。それを最終的には人間が判断して利用することかなと感じる。まさにマン−マシンの行ったり来たりということになる。その意味ではイノサイドでのニーズと新しいものの開発、改良が必須で、その連携が密であることがかかっている。